みんな子宮を持っている。
ふとテレビをつけると、中島みゆきのライブ映像がでましてね。
袖をめくりあげた白シャツにGパンの格好で、ライトにピカピカ反射する青いアコギを抱えていましてね。それで「地上の星」を、どこに寄りかかるわけでもない強い目で、それでいて正面からまったく目を離さず、いわゆる正気じゃない様子で歌っているんです。その声は、まるで大きな太鼓を、渾身の力で叩ききるような。まるで雷鳴のような。腹の底で眠っていた「畏れ」を叩きおこされるような。
ともかく、「なんだこれは」としかいいようがない。その響きに吸い寄せられるまま、よそ見が出来ない。目をそらせられない。こわい。
そして、その次の日でした。
ぼけけっとツイッターを眺めていると、ふと、とある友人が「中島みゆきは良いですね~」とつぶやいてるのを見つけました。さてはこの子も昨日のテレビを見たのかなとコメントをすると、「声もハスキーで腹部にパンチでした笑」と返信がきて。いや、腹部・・・というより「子宮に響くよね!! ぼくはないけど」とコメントを送ったら、こう返事が返ってきたのです。
「探せば見つかるかもしれませんよ~笑 力強さがいいですよね」
え。探せば見つかる・・・?
そして、「しん・・・」と、世界が一瞬にして静まりかえりました。
「僕は・・・男だ。そして人間だ。ほ乳類だ。生命だ。
だからきっと僕は・・・子宮をもっている。
もちろんこの肉体にはないけど、でも僕の中に母は存在する。そして、この精子の中に、いつか産み落とすかもしれない子に子宮があるのだとしたら、この僕もきっともっている。
目には見えないけど、ある。なぜなら僕やこの生命には、その記憶があるのだから・・・」
すると感覚が一気に変容をきたし、まるで日陰から日向に飛び出すように、自分のこの身体・・・もとい自分自身がひとつの個体でない感覚が、なにやら遠くから温かさとしてやってきました。
「思い出すんだよ。
きみの両親、そしてそのまた両親、その両親とさかのぼればどこにいくか。どこまでいくのか。人間のはじまり、動物のはじまり、植物のはじまり、地球のはじまり、宇宙のはじまり・・・。さかのぼれば、きみはこの宇宙の根元までさかのぼれる。そしてそれはつながってる。遠いどこかでじゃなく、いま、きみにつながっているんだよ。
それを思い出すんだ。それだけでいい。
そうしたら、きみはわたしであり、わたしはきみということも分かる。
あの葉っぱも、それを揺らす風も、きみ・・・」
「でも、じゃあそれを、どうしたら思い出せるんですか・・・?」
たしか数年前、真言宗の大阿闍利さまと僕はそんな話をして。それがふと心をよぎり、気づけば僕は、目に大粒の涙をうかべていました。
一体なにが分かったのか分からないけど・・・。なにか大きなものに叩きのめされた、そんな気持ちになりました。
そして・・・、その気持ちの冷めぬままTSUTAYAで借りてきたDVDを見たんです。「I AM」というドキュメンタリーなのですが、これがまた非常に面白かった。超おすすめです。
「ライアーライアー」や「ブルースオールマイティ」などジムキャリーの映画を多数手がけた監督が、あるとき事故に遭い、「脳震とう後症候群」という病気を患う。そこで苦しみに苦しみ、精神的な生死の境をさまよったことで、なにが大切なのかと思いなおし。ある日、この「人間」を探求する旅にでるわけです。
その旅で、その監督がいろいろな不思議な方々と話をするのですが、その中で、ヨーグルト菌に電極をとりつけて、その監督とヨーグルトが対面をするシーンがあります・・・。
なんとこの実験では、心臓のもつ微弱な振動や波動を感じ、ヨーグルトがその人のストレスを感じとって反応するんです。
仕事場・・・結婚・・・弁護士・・・で、ヨーグルトにつながった電極のメーターの針が振りきれる。監督の心臓とともに、ヨーグルトが動く。反応をする。
で、ここで「脳じゃなく、なんで心臓なの?」と思う方もいるかもしれません。けど、心臓なんです。この映画にもあるけど、実は人間を動かしているのは、脳じゃなく、心臓なんですって。
例えば、なにかとぶつかったとき。恐怖でも、歓びでもいい、なにかと人間が対面をしたとき。実は、反応するのは、脳より、心臓のほうがはやいらしいです。
まず心臓が変化をし、それから脳が変化をする。
もっというと、心臓は、たとえばその恐怖が物理的に目の前にくる、それより前に変化をはじめるのだそうです。つまり、つぎに訪れるものを予知するがごとく、心臓は反応をすると。。。
そして、その心臓の鼓動は、その人体を越え、周りに波紋を広げていて・・・
すべてはつながっていて・・・
なんて、この映画ではいうわけです。ぜひぜひ、みなさまにも見て欲しい。超おすすめです。
ただ、ひとつ注意すべきだと思うことを言うと、この映画のなかに「科学」として精神的なものを説明しようとする、上記のような箇所があるのですが、それを信じてはいけません。すごいすごいと上では伝えたけど、所詮「科学」は計れるもののみの話で、真実ではないからです。
もっとも、「科学がこうだっていうから、じゃあ信じる!」なんて。目に見えるものに、外の世界に、己の精神の答えを求めちゃいけない。外にあるのは全部ウソと思ったほうがいい。人に「きみは悟りをひらいた」なんて言われて喜ぶのはバカです。
まぁでも、こうやって騙されて、人は真実を歩めるのかもしれませんけど。
I AM ... 2011 DOCUMENTARY TRAILER - YouTube