タモリ

 

タモリ

 

もう、この字の並びだけで僕は少し笑ってしまう。カタカナ3文字で「タモリ」。ああ、なんて圧倒的な存在感なのか。

 

このカタカナ3文字の衝撃は、「ブッダ」の衝撃に似ている。

 

もしくは「イエス」か、「アラー」か、「アダム」か・・・・・・。この「タモリ」の衝撃は、あの32年続いたお昼の時間のせいで、もしかしたら僕ら日本人のDNAに知らぬまに深く刻まれてしまってるかもしれない。

 

生まれたばかりの赤ちゃんに「タモリ」というと、もしかしたらその30年後くらいに、突然・・・・・・

 

・・・・・・と、そんなわけで、最近「タモリブレイク」してしまった僕です。

 

一体なぜ僕がこんなことになったかというと、ことの発端は、先月実家に帰ったときに「ヨルタモリ」を見たことにあります。

 

ゲストにイケメン俳優が出ており、バーのママ扮する宮沢りえが、タモリに「もしタモリさんが、朝起きてこの顔になってたらどうします?」と聞いたのです。するとタモリが言いました。

 

「そりゃ、用もないのに街ぶらつくさ」

 

・・・・・・ふっ、と思わず僕は笑ってしまいました。そして、そのとき僕は家族と麻雀をしてたのですが、その「ふっ」と共に、突然なにかがこみ上げ、ぼんやりした幸せに包まれてしまいました。

 

そのあとも「合唱コンクールで、やたら口を大きく開けて歌う女子」とかをタモリがやってて笑ってしまい・・・・・・僕の隣には死にそうになってる犬がいたんですが、タモリを見たあとに犬を見ると、それもなんだか犬が体を張って笑いを誘ってるようで、思わず笑ってしまいました。

 

まるで、タモリを見てたら、一瞬で脳が病んでしまったという感じです。

 

なんというか、不自然だらけの現実に、「いや、冗談でしょう?」と突然気づいてしまったようでした。

 

タモリはまだ東京に来るまえに、福岡で喫茶店をやってたことがあるそうです。マスターとしてコーヒーなんかを煎れてたらしいですが、あるとき客が「ウインナーコーヒー」と頼むと、タモリはコーヒーにウインナーを入れて出したそうです。

 

一体なんなんでしょう、この人は。

 

まるで禅の和尚を彷彿させるというか、禅の悟りってこんな感じなんじゃないか。
いまの世で、誰よりもブッダなのは、実はタモリなんじゃなかろうか。

 

ある人が、テレビ局の楽屋かなんかで、タモリ中沢新一と話しているのを見かけたそうです。中沢新一といえば、チベットで実際に修行をしたこともある仏教学者なんですが、その人を相手にタモリはこんなことを言ってたそうです。

 

「仏教は、玄奘が仏典を中国語に訳したのが間違いだ。中国語じゃなく、インドから直接日本に入ってたら、日本の仏教はもっとすごいものになってた。だっておれ、サンスクリット語読めるんだもん」

 

タモリサンスクリット語が読めるのか・・・・・・。

得意のなりすましで言ってるのか、それとも事実か、しかしタモリならサンスクリット語が読めてもおかしくないと思ってしまいます。

 

ブッダの逸話に、「子供を生き返らせて欲しい」と嘆く女性にブッダがこんなことを言ったという話があります。

 

「誰も人が亡くなってない家から、芥子の実を3粒もらってきてください。その実で、死人が生き返る薬を作りましょう」

 

そう言われた女性は、死にものぐるいで、人の亡くなってない家を探します。しかし、村中を探してもそんな家は一軒も見つからず・・・・・・女性はなにかを悟ったように、とぼとぼとブッダの前に戻ります。

 

女性がブッダの前に戻ると・・・・・・ブッダは、「例の表情」をして女性を見つめていました。

 

例の表情とは、あれです。仏像によくある、薄ら笑い・・・・・・。

 

そうです。タモリがよくやるあの顔。実はブッダとタモリは、同じ笑みを浮かべているんです。そして、そう思うと、さきのブッダの言葉は、実はタモリの得意とする超シュールな冗談だったんじゃないかと思えてきます。

 

もしかしたら、ブッダのほうが、実はタモリだったんじゃないかとさえ思えてきます。

 

タモリはあの薄ら笑いで、ブッダと同じ目線でこの世を見ているのかもしれません。

 

僕はタモリブレイクをしてから、youtubeなんかでタモリのいろんな動画を見ました。その中で、フジテレビの梅津アナの結婚式に出たタモリがこんな祝辞を述べるシーンがあります。

 

「結婚式、クソ食らえでございます」

 

そして、アメフト部だった新郎の友人が挨拶をしてるときに、突然タックルをしたり、ブーケトスをとった女性に突然タックルをしたり、その結婚式でむちゃくちゃなことをします。

 

また、ある番組では「友達はいらない。諸悪の根元だ」とし「友達100人できるかな」という歌が大嫌いだということを言います。

 

「友達の多いことのなにが誇りなんだ。友達が多くなると人生が豊かになるだなんて、とんでもない間違いだ。結局、友達の輪だなんて言ってたら、その輪以上のことはなにも出来なくなる。ひとりでいるほうが、可能性が広がる。いまの世界は、ひとりを“ぼっち”といって見下げるけど、ひとりのがいい。ひとりのが、一番いいと思いますよ」

 

僕はタモリさんのこんな話を聞いて、「ふっ」と幸せな気分になります。

 

他の人はどうなんだろう?

 

ともかく、僕はそれだけでも、この時代に生まれて良かった。昔の人が、噂をたよりにブッダを探したように、僕も噂をたよりに「タモリ行きつけの蕎麦屋」なんかを探して行ってみようかな。

まあ、それで、もし本人に会えても、僕もニヤっと薄ら笑いするだけですが。