口癖が「地獄」

最近、口を開けば「地獄地獄」言ってる気がする。
 
 
「やあやあ、今日も暑いですなあ」
 
「ほんと、地獄のようですねえ」
 
 
という感じで、わりとほがらかに地獄を駆使している気がする。
 
で、このままだと「この際だし、ただの地獄だけじゃなく八大地獄を暗唱出来るくらいにはなっとこうかな」と、ユーキャンを開いて文部科学省認定の地獄検定試験の資料を請求しちゃう気がする。
 
で、試験にまんまと落ちて、こりゃやっぱワーホリして本場の地獄を学ばないといけませんなあとか言いだして、プロレスリングで地獄固め失神KOの後、イタリア在住のダンテさんと一緒に地獄に飛び立ち、そしてさっそく現地でアルバイト探しに勤しむも、
 
「いや~日本人のいる地獄はちょっと」

とか言って、アルバイトの選り好みをしてたらお金が無くなって、地獄から帰れなくなってブッダさま助けてじゃなくて。そんなわけなくて。
 
 
 
なんというか「地獄」が口癖になってる気がするんですよね。
  
で、それってなんていうか、自分で言ってて非常に怖いというか、もしかしたら末期なんじゃないかって、そんな気がするんですよね。
 
 
最初はたぶん、ほんの出来心だったんだと思いますよ。「いろんな言葉の頭に地獄ってつけると面白くない?笑」って感じで、小さい子がうんこだ雲母だと飽きずに言う感じで、地獄甲子園とか、地獄天然水とか、地獄南極物語とか、地獄おれのイタリアンとかって、目に入るものすべてに地獄地獄と付けてはうふふふと、心の中で密かに楽しむだけだったんです。
 
けどこれが、いつしか目に余ってきたというか、増殖するウイルスのように意識に浸食、暴走してきたというか、気付けば口を開けば地獄だヘルだと、まるでデーモン閣下じゃあるまいし。
 
 
ああ、「口癖は、ありがとうです」と胸を張りたい。胸を張って「ありがとうの魔法」とかいうワークショップをして、僕のほうが癒されたとかなんとか言いたい。
 
 
けど言ってみて、そのタイトルだけで、それこそ地獄のようにつまらなそうな気がして、そのつまらなさに思わず放屁なんて考える僕はもうダメかもしれない。
 
もう、どうしようもなく、つまらないばっかりだ。「ありがとうの魔法 地獄のワークショップ」なら、ちょっとは面白そうとか思うけど、問題の根本はそこじゃあない。
 
自分を含めたすべてをつまらなく思う、この死に至る病にどうにかして抗わなければ、いつ僕はつまらなさに押しつぶされ、地獄谷温泉での健康的な入湯自殺をブチ決めるか分かったもんじゃない。
  
 
故の、戦いである。
 
自分の度重なる失敗と絶望に抗わんとする、まさしくこれは戦いなのだ。
 
 
作戦名は「こぶとり爺さん大作戦」である。3日前に決まった。自分を取り囲む鬼どものことは忘れて、ただ踊りたい一心でレリゴーする単純明快なメガンテである。
 
というのも、もうそれっぽいことに飽き飽きなのだ。それっぽくしてる自分が、もはや肚の底から不憫なのだ。
 
もっと面白く生きたい。
 
僕のいう地獄は、つまりそういう意味なのだ。